【書評・小手先のテクニックよりも志を大切にせよ】『シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略』

シェアする美術館

みなさん、こんばんは。管理人のひっぺです。

みなさんは普段からよくSNSを利用されていますか。今も検索エンジンで検索する世の中ではありますがSNS、特にTwitterやinstagramが広がりを見せて以降、SNSで検索をする人たちが増えたように思います。

例えば、電車通勤をしていると、遅延が発生したりしますよね。そのとき、検索エンジンで検索をするよりも、SNSで検索をした方がリアルタイムで生の声を拾うことができます。取捨選択の目は必要になりますが、情報へのアクセスは多様化しているのが現代の特徴だと思っています。

情報収集に便利なSNSを、企業がマーケティング活動の一環で使用しない手はありません。オフラインからオンラインに変遷している中、情報提供のツールとしてSNSを選ぶのも、目的さえ間違わなければ有用な手段です。多くの企業アカウントが開設され、中の人という言葉も浸透していき、企業がSNSで生活者とコンタクトをする時代になりました。大量生産大量消費の時代からすると、その激変が想像できます。

これだけ成長しているメディアとはいえ、まだまだ歴史が浅いのも事実。SNSマーケティングに関する本も多数出版され、ネットには数多くの情報が転がっています。SNSの運用方法を解説したり、いわゆるバズる投稿を目指すテクニック紹介があったりもしますが、SNS運用担当者の心構えや志を説いている本は、『シェアする美術館』以外にないのではないのでしょうか。


『シェアする美術館』を読んだ目的

2つあります。

①SNS運用の知見を増やしたい
②メンバーにエッセンスを共有したい

ぼくは著者が登壇されたセミナーに参加したことがあり、実際に話を聞かせていただいて、本書にものすごく興味を持ちました。セミナーの振り返りにも有用だと思いました。前職で、SNS運用をしていた時期があったのですが、そのときは本当にもう手探り状態で、毎日が大変でした。正解が分からないので、正解を見つけるために日々色々な投稿をしていたことを思い出します。そんなときに本書があれば、どれほど力になったことか。

ぼくのSNS経験は5年以上前のことですので、状況も大きく変化していると思います。自分の知見としてキャッチアップしたかったのと、セミナー内容も踏まえてSNS担当のメンバーにシェアすることも、本書を読んだ大きな目的です。いま、マーケティングを担当している媒体はSNSの方向性を見失っているので、それを整理して仕切り直したいと思う気持ちもありました。

『シェアする美術館』のポイント

あえて3つに絞ります。

①目的の先にある「志」を意識する
②1対1のコミュニケーションを意識する
③定量的な報告を意識する

ひとつずつ、見ていきましょう。

ポイント①目的の先にある「志」を意識する

ビジネス活動において、目的が大事であると、誰しもが口をすっぱくして言います。それは至極真っ当で、当然のことであるのですが、本書では目的の先の「志」までを意識することが大事であると説かれています。

森美術館の場合、SNS運用の目的はひとつ。それは「集客」です。SNSを通して、森美術館が企画運用する展示会に足を運んでもらう。集客の手段として、SNSを活用しているわけですね。明確な目的です。でも、そこで止まらず、目的の先を見据えている。

森美術館のSNS運用の志とは何か。それは「芸術文化の発信による行動の喚起」です。ここは著者の完全な言葉ではなく、ぼくの解釈も含まれますが、美術館への集客だけでなく、芸術文化を発信することでフォロワーの人たちの生活を後押ししたい。そんな気概を、ぼくは感じずにはいられません。

ぼく自身、プロを目指してバンドをやっていた経験があるので、少しは芸術の世界を知っているつもりです。音楽でも、美術でも、芸術でも、文化やエンターテイメントとして括られる世界は、善し悪しはその人の感覚に委ねられる部分が大きいと感じています。セオリーやロジックもあると思いますが、着地点は人の心を揺さぶる感情に尽きる。そう捉えています。

芸術文化には、人の心を揺さぶる力があります。それは人によって生きる活力になったり、創作への活力になったり、人間の生々しい部分を変えたり助けたり広げたりする、とてつもなく大きな力です。森美術館はSNSの運用を通して、我々の生活を芸術文化の視点から良くしようとしている。これは目的を越えた素敵な志です。バズりだけを目指しているアカウントとは訳が違います。

ポイント②1対1のコミュニケーションを意識する

SNSを運用していくとフォロワーが増え、投稿のインプレッションやリーチ、エンゲージメントなども伸びていき、多数のファンを抱えながら投稿をしていくことになります。フォロワーの数が増えれば増えるほど、反応が良くなればなるほど、中の人は1対多数のコミュニケーションを取ろうとします。ひとつのかたまりに対して、言葉を投げかけるイメージですね。

ですが、著者はどれだけアカウントが広がりを見せても、1対1のコミュニケーションを忘れてはいけないと説きます。目の前のお客様を大切にする、目の前にお客様がいると思って投稿をする。その姿勢があると、自然と言葉が磨かれ、何を投稿すべきかが明確になると言います。森美術館が広告的な投稿をほとんどしないのも、その姿勢があるからでしょう。

人は基本的に勘違いしやすい生き物ですから、真摯に取り組むという原点を忘れてはいけないということなのでしょう。SNSは魔法の杖ではないので、何かを投稿すれば広まるという単純なものではありません。だからこそ、丁寧さが問われるのでしょう。

ポイント③定量的な報告を意識する

これは上長視点からすると、ちょっと笑えてしまう部分です。

例えばリスティング広告は、費用をかけた分だけコンバージョン数やコンバージョン単価が定量的に明確に算出されます。一方SNSは、直接的な成果を狙いづらく、社内の上層部も「結局、SNS運用していくら儲かったの?」的な短絡的な視点に陥ってしまうことがあったりします。理解されにくい手法なわけですね。

でも、SNSでは投稿がどのくらいフォロワーに表示されてリーチしたのかなど、定量的に数字で示せる部分があります。それを積み上げ式のグラフで見せていくと、自ずと右肩上がりのグラフになりますよね。上層部は結果が出ていること、特に右肩上がりのグラフを好む傾向にありますから、「おー広まっているじゃやないか」という話になる(笑)。戦略的にSNSの報告をする術も、SNS担当者には大事だと説かれています。

SNSでの広がりを定量的に見せることができると、社内での評価も変わってくる。このような実務的な話まで解説されている点が、本書の大きな特徴であり、他の書籍にはないオリジナルのポイントだと思います。著者の志を感じずにはいられません。

現場から運用を変えて上層部を巻き込んでいく

本書を読んでから、早速メンバーに共有し、SNSの教科書として回し読みをしています。現場がしっかりとした目的や志を持ってSNSに取り組もうとすると、上層部の納得度合いも変わってきます。なんとなくやっているから、明確にやっている状態になると、他のマーケティング施策とも絡ませやすいですしね。思考の幅も広がります。

マーケティング活動に携わっている方は、ぜひ一読されてみてください。上司の方にも、部下の方にも、参考になるポイントがたくさんあります。あとはそれを実践するだけです。もちろん、自分にも、言い聞かせています(笑)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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